薬剤師が勧める『健康と防災』

薬剤師コラム

災害の備え、していますか?

地震や台風などに遭っても自分だけは大丈夫と思い込んでいませんか。 この思い込みを「正常化の偏見」といい、被害を大きくする一因となります。 いつ自然災害に襲われるかもしれない現在、日ごろから災害に備えておくことが大切です。災害時にケガをしたり体調を崩したりしたとき、 近くに救急隊員や医療従事者がいるとは限りません。 自分たちで応急処置できるよう、薬や衛生用品などを救急箱に用意しておきましょう。

救急箱の中身を見なおそう

必要なものは揃っているか、使える状態にあるかを確認しましょう。

①応急処置用の衛生用品は多めにストック

ケガをするのは1カ所とは限りません。 また、 家族皆がケガをする可能性もあります。そうしたときに対応できるように多めに揃えて。

□包帯 □ばんそうこう □止血パッド □サージカルテープ □三角巾 □脱脂綿・清浄綿

②用意しておきたい市販薬

災害時は大きなストレスで免疫力が低下したり、自律神経が乱れたりして体調不良になりがち。 栄養が偏るのでビタミン剤も用意。

□ 総合感冒薬 □下痢止め・胃腸薬 □解熱鎮痛薬 □マルチビタミン剤

③肌ケアアイテムも忘れずに

災害時には皮膚を清潔に保てなくなり、アカや汚れで肌荒れしやすくなります。 赤ちゃんはオムツかぶれになることも。

□化膿止め・軟膏 □ワセリン・保湿クリーム

④その他

□目薬 □綿棒 □ 体温計 □マスク □爪切り □ピンセット □はさみ・カッター □油性ペン

救急箱のチェックポイント

①家族構成などに合わせて中身を追加

避難所を巡回する小児科医は それほど多くないので、子どものいる家庭では小児用の市販薬を追加するなど、 家族構成に合った中身に。

②1年に1回は点検して、 いつでも役立つ状態に

いざ応急処置をしようとしたら備品が不足していた、薬が古くなっていたなどということがないように、年に1回は点検しましょう。

③湿度の少ない 冷暗所に保管

救急箱は高温多湿、直射日光を避けて保管しましょう。 子どものいる家庭では、子どもの手が届かない場所に置くことも大切なポイント。

④薬は箱や添付文書と一緒に保管

市販薬の箱や添付文書には使用期限や用法・用量、使用上の注意などが記されています。薬と一緒に保管し、服用時には必ず読みましょう。

⑤お薬手帳を常に携帯

お薬手帳があれば災害時でも適切な医薬品や医療の提供が可能です。 お薬手帳アプリを利用

したり処方薬をスマホで撮影しておく方法も。

⑥処方薬は症状が似ていても共有しない

自分と似た症状だからと、 避難所などで自分の処方薬を他の人に分けるのはNG。 症状が似ていても同じ病気とは限らず、 その薬が合わないことも。

今すぐ取り組もう!物と家の備え

防災の重要性はわかっていても、実際に取り組むのは大変と思っている人におすすめしたいのが、日頃の生活の中に防災のエッセンスを取り入れる方法です。

日用品を上手に利用!物の備え

日常生活で使うもので、有事にも活用できるものがたくさんあります。

①普段使いのバッグに入れておきたいグッズ

携帯用充電器は必須。 止血バッド、携帯トイレ、ヘッドライト、ゼリー飲料などもいうとき便利。 防災アプリをスマホにダウンロードしておきましょう。

②非常持ち出し袋チェックリスト

電気やガスが止まる災害時を乗り切るには、非常用品の備えが必須です。

※数量は大人1人1日分です。

□非常食 □ペットボトル飲料水(500ml)3本 □懐中電灯1個 □LEDランタン1個

□着火ライター・ライター1個 □携帯ラジオ1台 □多機能ナイフ1個 □軍手・手袋1対

□レジャーシート1畳分 □サバイバルブランケット(防寒・保温シート)1枚 □下着1セット

□簡易トイレ1枚 □タオル2枚 □ポリ袋5枚 □トイレットペーパー1ロール

□ウェットティッシュ1個 □歯ブラシ1本 □洗口液1本 □現金(小銭も) □充電器

□笛1個 □メモ帳とペン1セット □使い捨てカイロ2個 □毛抜き1本

□消毒薬1本 □脱脂綿適宜 □ガーゼ(滅菌)適宜 □ワセリン1個 □ばんそうこう5枚

□包帯1巻 □三角巾1枚 □マスク2枚以上 □常備薬・持病薬など適宜

 

③季節に合わせて必要な物をプラス

冬の前にはカイロや厚手の靴下などを、夏の前には冷却パックや携帯用扇風機などをプラスして、寒さや暑さ対策を講じておきましょう。

④家族分用意する

非常持ち出し袋は一人ずつ用意するのが基本です。 あれもこれもと入れすぎると重くて背負えなくなります。背負って歩けるか必ず確認を。

⑤玄関近くの取り出しやすい場所に保管

玄関や寝室の出入り口に置いておけばバッと持ち出せます。 家に入れなくても持ち出せるように、 外の物置に置いておくのもいいでしょう。

⑥水害のときは、着替えなどが濡れない工夫を

水害時には、着替えなどが濡れないようにジッパー袋に入れたら、さらにビニール袋に入れてリュックの中に。 リュックは防水機能付きがベター。

⑦キャンプ用品が防災にも役立つ

フライパンやザルなどが1つの鍋に収まる調理器具など、 機能的で耐久性が高く軽量化されているキャンプ用品は防災時に大活躍します。

⑧防災ベストやフィッシングベストの利用も

複数のポケットに最低限の防災グッズを入れておける防災ベストやフィッシングベストなら、 背中に負傷者を背負ったり、 全速力で走れたりして便利。

⑨食料は家庭内備蓄で

缶詰やレトルト食品、 乾物などは少し多めに買っておき、 普段は古い物から食べ、その分を買い足しておけば賞味期限切れを防げます。

⑩災害時には野菜不足になりやすい

避難所での食糧支援は菓子パンやおにぎり弁当などが多く、野菜不足になりがち。 そのため便秘に悩む人が少なくありません。フリーズドライした野菜や、野菜の缶野菜ジュースなどをストックしておきましょう。

ケガをしない安全な家の備え

家の中の危険を減らすための基本は物をなるべく少なくすることです。

①家具・家電の転倒防止、 位置の見直し

家具や家電は落ちない・倒れない・転がらないの3つの 「ない」 に。 タンスは突っ張り棒の代わりにダンボール箱ですき間を埋めてもOK。

②重い物は下、軽い物は上に

重い物や割れやすい物は棚の下のほうに、軽い物や割れにくい物、 ぬいぐるみのような当たっても痛くない物は上に置きます。

③家や職場がある地域のハザードマップを確認

家や職場がある地域で予想される災害をまとめたハザードマップ。 国土地理院のサイト 「防災にも役立つ! 地理院地図の使い方」 や、 町名の由来も参考に。 https://maps.gsi.go.jp/help/intro/municipality/sonae.html#link07

応急手当を知っておこう

①止血方法

出血部位をガーゼや清潔な布でおおい、ゴム手袋やビニール袋を着用した手や包帯で強く圧迫します。 それでも止血できない場合は、患部より心臓に近い動脈を親指で骨に向かって強く圧迫します。

②骨折部の固定法

棒や段ボール、傘などの固いものをそえ木として骨折部に当てて固定します。 腕の骨折の場合は そえ木で固定したあと、三角巾やスカーフなどで腕が動かないようにします。

知っておくべき被災時の知恵

災害時には普段の生活では考えられないようなさまざまな不便が生じます。そうしたとき、ちょっとした知恵や工夫で不便を解消できることが多々あります。

エコノミー症候群の予防! 簡単ストレッチの知恵

避難所では活動量が減ります。 そのため、 下半身に血栓ができるエコノミー症候群や、心身の機能が低下して動けなくなる生活不活発病を起こしやすくなるので注意。 気が向いたときにストレッチなどをして予防しましょう。

床の上でできるストレッチ①

片方の手を反対側のひざの外側に添えて腰をひねります。

床の上でできるストレッチ②

両手を床につき、上半身を起こして、お腹の前を伸ばします。

床の上でできるストレッチ③

両手を後ろについて片ひざを曲げ、 上体を後ろに倒します。

床の上でできるストレッチ④

両手を遠くに置き、 お尻を引いて背中を弓なりに伸ばします。

阪神・淡路大震災で注目された クラッシュ症候群

阪神・淡路大震災で重いがれきにはさまっていた人が、救出直 後には元気だったの に、圧迫を受けた筋肉から毒素が全身に巡り、数時間後に重症化したり、死に至ったりしたケース が多く見られたことから、広く知られるようになりました。 

水は貴重!食事と衛生の知恵

災害時には断水することも多くあります。貴重な水を大切に使いましょう。

①食器はラップを かけて使用

食器にラップをかけてから料理を盛り、食べ終わったらラップを捨てれば食器は汚れないので、食器を洗う水を節約できます。

②口腔ケアの仕方

歯ブラシがない場合は、 少しの水で口をゆすぐだけでもさっぱりします。ハンカチなどを指に巻いて歯の汚れを取るのもおすすめ。

③あると便利、ペットボトルシャワー

ペットボトルに水を入れて、 キリや画びょうなどで穴を開けたキャップをつければシャワー代わりに。 手や足を洗ったりするのに便利です。

④ポリ袋調理で無駄なく温かい料理を

米や野菜などの食材を入れたポリ袋(湯煎調理可の高密度ポリエチレン製のもの)をそのまま湯に入れて加熱するだけ。 1つの鍋で数種類の温かい料理が作れます。

⑤トイレ環境を整える

災害時、 トイレ環境が悪いからと、 水分摂取や食事を控えてトイレに行かないようにするのはよくありません。 市販の簡易トイレを十分に用意。

⑥給水はリュックにゴミ袋もおすすめ

水を入れたバケツは重くて、運ぶのが大変。 リュックにゴミ袋を二重に入れてバケツ代わりにすると、背負って運べるので楽です。

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引用

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