薬剤師が勧める『香りで整う心と体』

薬剤師コラム

香ばしいコーヒーや紅茶を飲むとき、時の流れがゆったりと感じられます。花の甘い香りに包まれると、自然と幸せな気持ちになります。このように不思議な力を持つ香りを日々の生活の中に上手に取り入れてみませんか。きっと心も体ものびやかになることでしょう。

自分の好きな香りを見つけよう

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香りが体に作用するしくみ

香りをキャッチするのは、鼻の奥にある嗅細胞です。ここで香りの情報は電気信号に変換され、間脳にある視床下部へと伝達されます。視床下部は自律神経、ホルモンの分泌、免疫系などを統括する生命活動のいわば司令塔。ここに届いた香りの情報が全身に働きかけます。

エッセンシャルオイルとは

生活の中で香りを気軽に楽しめるのがエッセンシャルオイル(精油)を用いる方法。植物の花や葉、種子、果 皮、樹皮などがもつ芳香物質を抽出した天然の液体がエッセンシャルオイル です。

香りの7つのグループ

エッセンシャルオイルは、植物の種類や香りの特性によって7つに大別されます。知っておくとブレン ドする際にも便利です。同じグループや隣のグループのオイルはブレンドの相性が良く、香りが調和します。

①柑橘系

シトラス系ともいわれ、主に果物の皮から抽出されるオイルで、柑橘類のさわやかでみずみずしい香りが特徴です。

【主なもの】 オレンジ・スイート、グレープフルーツ、レモングラスなど

②フローラル系

主に花から抽出されるオイルです。ローズやジャスミンのように採取できる量が少なく 高価なものも。華やかで甘くやさしい香りがします。

【主なもの】 ラベンダー、 カモミール・ローマン、ローズ オットーなど

③エキゾチック系

個性あふれる魅惑的な香り。東洋的でミステリアスな雰囲気を有するオイルが多くあることから、オリエンタル系と呼ばれることも。

【主なもの】 イランイラン、サンダルウッド、パチュリなど

④樹脂系

文字どおり樹脂から抽出されるオイルで、甘く重厚な香りを持っています。少量でも長く香りを楽しめるものが多くあります。

【主なもの】 フランキンセンス、ベンゾイン・レジノイド、ミルラなど

⑤スパイス系

主に香辛料にも使われる植物から抽出されるオイルで、スパイシーな香りが特徴です。 刺激が強いものが多いので、使用する際には注意して。

【主なもの】 コリアンダー、ジンジャー、ブラックペッパーなど

⑥樹木系

樹木の葉や小枝、樹皮などから抽出されたオイルです。まるで森林浴をしているかのようなフレッシュで清涼感のある香りです。

【主なもの】シダーウッド、ジュニパー、ティーツリーなど

⑦ハーブ系

ハーブの花や葉から抽出されるオイルです。清涼感があり、さわやかですっきりとした香りで、甘さはほとんどありません。

 【主なもの】 ペパーミント、ローズマリー、バジルなど

香りの楽しみ方

日本では古くから「香道」という香りの文化を暮らしの中で育んできました。そうした背景を持つ私たちは、香りをもっと身近に楽しむことができるはず。香りとともにある毎日は、きっと生活に潤いをもたらすことでしょう。

空間に香りを放つ

熱や風を使ってエッセンシャルオイルの香りを室内に拡 散させ、香りを楽しむ方法です。

①手持ちのマグカップで芳香浴

マグカップにお湯を入れて オイルを1~2滴落とし、鼻を近づけて香りを楽しみます。香りは長く続かないので、パッと気分転換したいときにおすすめ。飲用しないよう注意。

※せきが出るときや、喘息がある人は行わない

②使うシーンで選びたいディフューザー

香りを周りに拡散させる道具の一つがディフューザーです。電気やキャンドルなどの熱を利用するものや、ミストを噴出し香りを広げる超音波式などさまざまな製品があります。

③キャンドルの灯りが部屋を優雅に演出

キャンドルの熱が芳香成分を揮発させます。薄暗くした部屋で見るキャンドルの灯りはリラックス効果も。受け皿にオイルを垂らすアロマポットやオイル入りのキャンドルなどがあります。

④キッチンやリビングにシュッとスプレー

殺菌や消臭成分を含むオイルと精製水と無水エタノールを用いてスプレーに。 キッチンやトイレの掃除、 ルームスプレーに。使う前によく振ること。

※30mLのスプレーを作る場合:オイル12滴、精製水20mL、無水エタノール10mL

肌から香りを取り込む

エッセンシャルオイルの分子は非常に小さいため、皮膚 に取り込まれ、さらに血液の流れにのって全身へ。

①入浴と香りの相乗効果で贅沢タイム

湯船にオイルを最大で5滴ほど落とし、よくかき混ぜてから湯に浸かります。ぬるめの湯にじっくり浸かれば副交感神経が活発になって心身ともにリラックスで きます。

②手荒れや足のむくみのケアに

大きめの洗面器に湯を入れ、オイルを2~3滴落とし、よくかき混ぜます。手を浸せば手荒れのケアに。 足を浸ければむくみを軽減。風邪などで入浴できないときにもおすすめ。

③鼻と肌からの香りマッサージ

オイルをキャリアオイル (基材)で薄めてトリートメントとして使います。少量を手にとり、手や足をやさしくマッサージ。できれば入浴後、体のほてりが治まってから行いましょう。

※キャリアオイル:エッセンシャルオイルを希釈するための植物油。アロマ専門店などで購入できます。

香りを持ち運ぶ

バッグの中に香りをしのばせませんか。外出先でも、ほのかな香りを楽しめます。

①乗り物酔いにハンカチを

ハンカチにオイルを1~2 滴落とし、鼻に近づけて吸入します。乗り物酔いなどのときにも便利です。バッグからハンカチを取り出したとき、かすかな香りがするのもオシャレです。

②鼻づまりをスッキリさせるマスク

ユーカリやペパーミントなどのスッとした香りのするオイルを使い、キッチンスプレーと同じ要領でマスク用スプレーを作っておくと便利です。マスクに1回シュッとスプレーします。

③さりげなく香りを楽しむ、しおり・名刺

オイルをコットンに落とし、 そのコットンと一緒にしおりや名刺を密閉袋に入れ香りを移します。本を開いたとき、名刺を差し出したとき、ふわりとした香りがただよいます。

エッセンシャルオイルの使い方

オイルを取り扱う際の注意点を覚えておきましょう。

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①原液を肌に直接つけない

オイルは植物の芳香物質が凝縮されているため、直接肌につけるには刺激が強すぎます。また、柑橘系のオイルには紫外線の刺激によって肌トラブルを起こすものもあるので注意して。

②ラベル表示をよく見て購入する

100%天然のオイルを使用します。ラベルの原材料や原産国、使用期限などを確認。専門店での購入が◎。 “アロマオイル”と表記されているものは100%ではないものが多いので注意。

③火気がある場所で使わない

オイルは引火する可能性が あります。ガスコンロやガスストーブなどの近くでの使用は絶対に避けましょう。キャンドルと一緒に使うときも十分な注意を払いましょう。

④妊娠中の方、高齢の方などは気をつけて

オイルの中にはホルモンバランスに働きかけるものがあるので、妊娠中の方は注意が必要です。また抵抗力の弱い高齢の方やお子さんはオイルの影響を受けやすいといわれます。使用前にアロマテラピー(芳香療法)の専門家に相談しましょう。

作ってみようハーバルソープ

無香料の粉せっけん100gをビニール袋に入れたら、お好きなドライハーブ2gで作った濃いめのハーブティー20mLを注ぎ、よく練ります。オイル15滴とドライハーブ1gを加え、さらに繰ります。 好きな形に成形し、乾燥させます。

シーン別おすすめエッシェンシャルオイル

目的に応じてオイルを選ぶのも良い方法です。

スッキリ目覚めたい

なんとなく頭がぼんやり。こんな朝は、お風呂の床にオイルを1~2滴垂らしてから熱めのシャワー。香りが広がり心も体もスッキリします。サイプレス、ローズマリー、グレープフルーツなど

今日1日頑張れる活力がほしい

パンチのある香りや躍動感のある香りで、今日1日をはつらつと過ごしましょう。スプレーにして空間にシュッとひと吹きする使い方も。ブラックペッパー、ペパーミン ト、オレンジ・スイートなど

仕事や勉強に集中したい

キリッとしたシャープな香りやレモンのようなクリアな香りは、仕事や勉強に集中したいときや、やる気をアップしたいときにピッタリ。ペパーミント、レモングラス、レモンなど

仕事でミス。 気持ちをリセットしたい

仕事でミスをして落ち込んでしまった、そんなときは気持ちをリセットしてくれる香りを吸って深呼吸しましょう。グレープフルーツ、ミルラ、シダーウッドなど

1日の疲れを取りたい

甘い柑橘系の香りや草原を思わせるやさしい香りで緊張をほぐし、落ち着きを取り戻しましょう。手軽なマグカップ芳香浴でもOK。ベルガモット、ラベンダー、スイートマージョラムなど

ぐっすり眠りたい

ティッシュやコットンにオイルを1滴落とし枕元に。エキゾチックな香りや森林を思わせる香りがやさしく眠りへと誘います。イランイラン、サンダルウッド、 シダーウッドなど

認知症の予防に香り!?

アルツハイマー型認知症では喉の機能低下がみられます。香りにより嗅覚を刺激させることは認知症の予防に役立つのではないかと期待されています。朝は ローズマリーとレモン、夜はラベンダーと オレンジ・スイートの組み合わせが効果が高いとの報告があります。

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引用

“引用文献:classA Life”

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