管理栄養士が勧める『油と健康の話』

薬剤師コラム

油というと「健康に悪い」と思いがち。でも、油(脂質)は生命維持に必須な三大栄養素の一つ。正しい知識のもとで適切に摂取することが大切です。

油のあれこれ

こんな生活していませんか

気づかないうちに、 必要以上に油を摂っていることが多くあります。

□ 外食・テイクアウトが多い

□おやつはスナック菓子かケーキ

□週に何度も揚げ物を食べる

□インスタント食品をよく利用する

□たっぷりの油で 調理をしている

油の役割とは

①1gあたり9kcalのエネルギー源

糖質やたんぱく質が1gあたり4kcalのエネルギーを産生するのに対して、油(脂質)は9kcal。同じ量のエネルギーを得るために摂取する量は約半分です。

②ホルモンや細胞膜をつくる

体内の油(脂質)は中性脂肪、脂肪酸、コレステロール、リン脂質として存在。コレステロールは細胞膜やホルモン、リン脂質は細胞膜の材料になります。

③脂溶性ビタミンの吸収を助ける

脂質は脂溶性ビタミン(ビタミンA、D、E、K)を溶かして、体内への吸収を高めます。また、多くの植物油はビタミンEの重要な供給源です。

体と油の現状

①見える油と見えない油

私たちが食べている油のうち、調理に使うサラダ油などの見える油は全体の2割ほど。残りの約8割は食品の成分として、姿を見ないまま食べています。

②油の摂取量は増えている!?

油の摂取量は1995年ごろまでは増加していましたが、それ以降は 横ばい状態。しかし、摂取している油の種類とそのバランスが偏ってきたといわれています。

③摂り過ぎるとどうなるの

油の種類によっては、過剰に摂取すると細胞や血管に脂質が蓄積され、動脈硬化につながり、高血圧や糖尿病などの生活習慣病のリスクを高めます。

脂肪酸の構造で分類

油の主成分は脂肪酸で、炭素原子が鎖状につながった構造をしています。よく聞く「○○脂肪酸」は炭素同士の結合のされ方で分類されています。

①飽和脂肪酸

常温で固体のものが多く、炭素の二重結合がない。

②不飽和脂肪酸

常温で液体、炭素の二重結合がある。

一価不飽和脂肪酸

体内でつくることができる、炭素の二重結合が1個のみ。

【オメガ9系脂肪酸】
オレイン酸:オリーブ オイル、こめ油など

多価不飽和脂肪酸

体内でつくることができない、炭素の二重結合が2個以上ある。

【オメガ3系脂肪酸】
α-リノレン酸:えごま油、あまに油など 
EPA・DHA:サバ、イワ シなどの魚介類

【オメガ6系脂肪酸】
リノール酸:大豆油、コーン油など 
アラキドン酸:卵黄、豚レバーなど

最近よく聞く、これってどんな油? 

①トランス脂肪酸

常温で液体の植物油に水素を添加して、半固体・固体の油を製造する際に生じる脂肪酸。風味や口どけがよい。

②MCTオイル

脂肪酸の炭素の鎖の長さが一般的な油の半分。早く分解され、すぐにエネルギーになり、体に残りにくい。

控えたい油と摂りたい油を知ろう

油は単に減らせばよいというものではありません。 積極的な摂取がすすめられる油もあります。

控えたい油

①常温で固まっている :飽和脂肪酸

牛や豚など動物性の脂防に多く含まれ、常温で固形です。過剰摂取は心筋梗塞などの心血管疾患のリスクを高めます。体内でもつくられるので、現代の食生活では摂り過ぎる傾向があります。

②過剰摂取は肥満の原因 :オメガ9系脂肪酸

ほとんどがオリーブオイルやこめ油などのオレイン酸です。飽和脂肪酸と同様に体内でつくられます。血中コレステロールを低下させますが、摂り過ぎると肥満の原因になります。

③心筋梗塞のリスクアップ:オメガ6脂肪酸

体内では合成されません。乳幼児や成長期には必要な油ですが、摂り過ぎるとアレルギー症状や血栓が生じやすくなります。 代表はリノール酸(大豆油など)を多く含む植物油全般。

④そのまま体内をさまよう:トランス脂肪酸

体内に入っても利用されず、そのまま細胞壁に蓄積されやすいため、動脈硬化などのリスクを高める危険が。マーガリンや、 クッキーやケーキなどの市販の菓子類に多く含まれています。

摂りたい油

①魚を食べないと不足しがち :オメガ3系脂酸

□a-リノレン酸

えごま油やあまに油に多く含まれ、体内に入ると一部がEPAやDHAに変換されます。血中コレステロールの低下やアレルギー症状の緩和、血圧低下、炎症抑制などの動きが。

□EPA・DHA

α-リノレン酸の一部から変換されるほか、魚介類に多く含まれます。EPAには中性脂肪低下や抗アレルギーなどの作用があり、DHAは記憶や学習など、主に脳の健康に役立ちます。

オメガ6系とオメガ3系のバランスが大事

細胞膜にあるオメガ6系はオメガ3系よりも硬めの油で、お互い正反対の働きがあります。食生活が偏ると柔軟性のある細胞膜にはなりません。 理想的な摂取バランスは4:1です。

摂り過ぎている油の減らし方を知ろう

日々の調理の仕方をほんの少し工夫するだけで油の摂り過ぎを防ぐことができます。

①食材で減らす

脂肪の少ない食材を選んで。肉類は種類だけでなく、部位にも注意。豚肉や牛肉ならバラやロースではなく、赤身、ヒレ、ももを。鶏肉はももより、ささみや胸肉を。さらに皮を取り除くと脂肪を大幅にカットできます。

②下ごしらえで減らす

脂肪の多い肉の煮物は、材料から出た脂が煮汁に浮いてきます。それを丁寧に取り除きながら煮る と余分な脂肪分が抜けます。脂肪が多い豚の角煮などは、下茹ですると脂肪がお湯に溶け出し、脂 肪を落とせます。

③切り方で減らす

食材を細かく切るほど表面積が増えるので、結果的に油やドレッシングが食材に多く付着することに。少し大きめにカットしたり、ざっくりと手でちぎるなどして付盖率を低くしましょう。

④調理器具で減らす

目分量だとどうしても多くなりがちです。計量スプーンなどできちんと計って使うと、無駄がなく、摂り過ぎも防げます。フッ素樹脂(テフロン)加工のフライパンや鍋を利用すると、少ないの量で調理できます。

⑤火の入れ方で減らす

揚げ物は衣が揚げ油を吸収するため、口に入る油の量が多くなります。ソテーなどは揚げ物ほどではないものの、焼き油の脂肪が加わります。 蒸す・茹でる場合は、調理の過程で余分な脂肪分を減らせます。

⑥加工食品の中の見えない油に注意

加工食品には脂質の量が必ず表記されています。確認して摂取過多に注意して。

良い油の摂り方を知ろう

食の欧米化とともにオメガ3系の摂取量が減り、オメガ6系とのバラ ンスが崩れています。

①新鮮な魚を刺身で

DHAやEPAはサバやイワシ、サンマなどの青魚や、ブリ、サケなどの魚に多く含まれます。煮たり焼いたりする とDHAやEPAが流出。生で食べるお刺身なら効率よく摂れます。鮮度が落ちると酸化しやすいので新鮮な魚を選んで。

②魚の缶詰もおすすめ

手軽にDHAやEPAが摂れるのが魚の缶詰。水煮タイプは水を入れてボイル殺菌。油漬けタイプはボイル後に煮汁を捨て、多くは植物油に漬け込んでいるので、DHAやEPAの含有量は水煮タイプに比べかなり減少します。

③えごま油やあまに油は小さじ1杯

オメガ3系の1日当たりの摂取目安量は約2g。えごま油は全体の約60%、あまに油は約50%がオメガ3系なので、これらからオメガ3系を摂る場合は1日小さじ1杯程度、約4gが目安。加熱せず、サラダや味噌汁などにかけるのがおすすめ。

④DHAは子どもの脳の発達に重要

人間の脳の約65%は脂質でできています。脳が急速に発達するのは妊娠後期から2歳くらいまで。その間は脳の材料となる脂質、特に脳を活性化するDHAを摂り続けることが大切。妊娠中、授乳中の方も積極的な摂取を。

油の保存方法を知ろう

油には酸化しやすい性質が。どのような状態で保存するかによって酸化の進行が異なります。

サラダ油・ごま油・オリーブオイルは冷暗所

油を酸化させる3大要因は熱、空気、光です。サラダ油やごま油などの植物油は、開封したら直射日光の当たらない冷暗所で保存。2~3ヵ月で使い切りましょう。

えごま油、あまに油は冷蔵庫

油の中でもえごま油やあまに油などのオメガ3系は特に酸化に弱いので要注意。開封前は冷暗所で、開封後は冷蔵庫で保存しましょう。開封したらできるだけ早く使い切って。

劣化した油の特徴

いやなにおいがしたり、色が濃くなっていたら、酸化が進んでいる可能性が大。揚げ油の場合は、泡が消えにくかったり、ねばりが出ていたら、酸化しているサインです。

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引用

“引用文献:classA Life”
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