薬剤師が勧める『体が喜ぶいい呼吸』
呼吸を見直してみませんか
私たちは呼吸をしなければ生きていけませんが、 呼吸の役割は生命の維持だけではありません。 呼吸は感情と密接に関係していて、呼吸の仕方ひとつで心の持ち方も変わります。 日ごろ無意識に行っている呼吸を見直してみませんか。
まずは自分の呼吸をチェック
普段、 どんな呼吸をしているか、 自分では意外にわからないもの。 下記の項目に多く当てはまる人は、 呼吸が浅く早くなっている可能性が。
□20秒以上かけて息を吐くことができない
□気がつくと口が開いている
□猫背である、もしくは背中が丸まっている
□肩や首が凝っている
□よくため息をつく
□日常生活の中で息苦しさを感じることがある
二つの呼吸法を知っておこう
①横隔膜を動かす腹式呼吸
みぞおち付近の横隔膜を主に動かす呼吸法。 鼻から息を吸い横隔膜を下げるイメージでおなかを膨らませてから、口から息を吐き出します。 こうすることで横隔膜が上がり、 肺の底に停滞しがちな二酸化炭素をより多く吐き出すことができます。
②肋間筋が働く胸式呼吸
肋骨と肋骨をつなぐ肋間筋を主に働かせて、 胸部の骨格を広げたり狭めたりする呼吸です。 胸 を膨らませながら鼻から息をゆっくり吸います。 胸が縮むのを意識しながら口から息を吐きます。 スッキリとした目覚めを促すときにおすすめ。
深くゆっくりとした呼吸の効果
いい呼吸とは、腹式と腹式の両方を含む「深くゆっくりとした呼吸」です。
●効果①:心が落ち着く
喜怒哀楽などの感情を生み出しているのは脳の扁桃体と呼ばれる部位。 呼吸のリズムもここで作られます。 深くゆっくりとした呼吸リズムは扁桃体にも伝わり、心が落ち着いてきます。
●効果②:姿勢がよくなる
脊柱起立筋などの背中側の筋肉は呼吸に関わるとともに、 姿勢を保つ筋肉でもあります。 深くゆっくりとした呼吸は、背中側の筋肉もしっかり使うので、 自然と姿勢がよくなります。
●効果③:肩や首の凝りが改善する
「肩で息をする」 という表現があるよう に、肩や首の筋肉は呼吸にも使われます。深くゆっくりとした呼吸は肩や首の筋肉のストレッチになり、 血流も促され、凝りが改善します。
●効果④:代謝がアップする
呼吸に関係する筋肉を構成する筋線維の半分は、 脂肪を燃焼させる赤筋(遅筋)。 特に肋間筋は、ほぼ赤筋で構成されています。 いい呼吸で筋肉を大きく動かすと、脂肪がより燃焼し、代謝がアップ。
●効果⑤:自律神経を整える
現代は、常に緊張を強いられるストレス社会といわれています。 ストレスは交感神経と副交感神経のバランスを不安定にし、自律神経を乱します。 いい呼吸は副交感神経を優位にし、自律神経を整えます。
いい呼吸になるための呼吸筋ストレッチ
呼吸は肺の拡張と収縮によって行われますが、この肺の動きを作っているのは肺を取り囲んでいる肋間筋や横隔膜などの呼吸筋です。深い呼吸をするには柔らかい呼吸筋が必要です。ストレッチで、呼吸筋を柔らかくしましょう。
●ストレッチを始める前に
各ストレッチは1セット3回が目安。 起床時、 昼食前、 就寝前というよう に、毎日決まった時間に各1セット行うとよいでしょう。
①基本姿勢
両足を肩幅に開き、肩の力を抜いて、 背すじをすっと伸ばします。 体が硬かったり、痛みがある場合は、最初はイスに座って行い、慣れてきたら立位に変えてもOKです。
②ゆっくり呼吸する
1, 2, 3 と数えながら鼻から息を吸ったら、その倍の6つ数えながら、ゆっくりと口から息を吐き出します。
③メリハリを大切に
呼吸筋をしっかり広げる、しっかり伸ばす、ぐっと縮めるというように、一つ一つの動作にメリハリを
つけます。
④無理をしない
“痛気持ちいい” くらいまで伸ばすのが目安です。 無理をすると、 かえって筋肉を傷めてしまうので気をつけて。
吸う筋肉をゆっくり動かしてほぐす
●肩の上げ下げ
首から肩にかけての僧帽筋を中心にストレッチをして、肩まわりをほぐします。 呼吸に合わせて行 いましょう。
①鼻から息をゆっくり吸いながら、両肩を上げます。
②口から息をゆっくり吐きながら、 肩を前側から回して後ろ側に下ろします。 これを繰り返します。
●首のストレッチ
重い頭を支えている首の筋肉をやさしくほぐします。 無理に伸ばさないように気をつけて。
①鼻から息をゆっくり吸いながら、頭を左側に倒します。 同時に、右手は右下へ伸ばします。
②口から息をゆっくり吐きながら 元の姿勢に戻します。 反対側も同様に。
●背中・胸のストレッチ
胸の高いところ、鎖骨の少し下あたりを意識して、背中を丸めていきます。
①胸の前で手を組み、ゆっくりと呼吸。息をゆっくり吸いながら腕を前に伸ばしていき、背中を丸めていきます。
②ゆっくり息を吐きながら、元の姿勢に戻します。
吐く筋肉に刺激を与えてほぐす
●体幹のストレッチ
胸の下部の筋肉を中心にほぐします。体のバランスをとりながら全身を伸ばしていきます。
①頭の後ろで手を組み、鼻からゆっくり息を吸います。
②口からゆっくり息を吐きながら、手のひらを下にして腕を上げて背伸び。力を抜いて元の姿勢に戻し、ひと呼吸。
●腹部・体側のストレッチ
息を吐くときに使う胸の横や、わき腹にある筋肉をしっかり伸ばしていきましょう。
①右手を頭の後ろに当て、 ゆっくり息を吸います。
②ゆっくり息を吐きながら、ひじを持ち上げるようにして体の側面を伸ばしていきます。 手を変えて反対側も同様に。
●胸のまわりのストレッチ
肩甲骨を意識しながら、胸を大きく動かしましょう。胸や肩が動きにくい人は特に丁寧に。
①腰の後ろで手を組み、ゆっくりと息を吸います。
②ゆっくりと息を吐きながら、両腕を後方に伸ばして胸を開きます。 吐き切ったら、元の姿勢に戻します。
気になる症状と呼吸
●睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸の停止を繰り返す病気で、主な原因は肥満です。 眠りが浅くなるため睡眠の質が低下したり、 昼間に強い眠気が現れたりします。 大きなイビキをかく人は念のため受診を。
●喫煙とCOPD
喫煙というと肺がんを連想しがちですが、 肺がん以上に関係が深いのがCOPD(慢性閉塞性肺疾患)。 喫煙者で、 階段や坂道を上がるときに息切れを起こす場合は、肺機能検査を受けましょう。
●鼻呼吸はなぜ良いのか。
鼻には空気中の異物を肺の中に吸い込むのを防ぐ役割が。 ウイルスのようなマイクロ粒子をシャットアウトするのは難しいのですが、 鼻呼吸は空気に湿り気を与え、気道の損傷を防ぎます。
●能と呼吸の小咄
能では、演者は能面をつけて役を演じます。 それでも役の心の動きが観客に伝わってくるのは、能役者の脳内で生み出される感情が呼吸に投影されるからといわれます。 能は呼吸の芸術でもあるのです。
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引用文献
classA Life