薬剤師が勧める『噛んで健康』

薬剤師コラム

11月8日は「いい歯の日」

一度の食事であなたは何回噛んでいますか? 現代人の噛む回数は昭和10年代の半分以下の600回程度まで減少しているとか。 よく噛まずに食事をすると体にさまざまな負担をかけます。「もし歯がなくなったら?」。 肉食動物は獲物を捕れなくなり、草食動物は草や葉を食べられなくなります。 人間も食の楽しみを失います。誰もが美味しい食べ物を目の前にすると、自然と笑顔になります。 そして食べ物を口に入れ、ゆっくり噛みながらその美味しさを実感できれば、これほどの“口福”はありません。そのためにも、"いい歯の習慣”を続けましょう。

よく噛むことの効果①胃腸の負担を減らす

よく噛むことで食べ物が細かく砕かれ、唾液とよく混ざり合って消化しやすい形に変わるので、 腸の負担が減ります。

よく噛むことの効果②脳を刺激する

歯を支える骨と歯根の間にある歯根膜の神経は中枢神経につながっています。 噛むことでその神 経を介して脳を刺激。

よく噛むことの効果③食材本来の味を楽しめる

よく噛むことで食べ物の形や歯ごたえなどを感じることができ、食材本来の味が楽しめます。

よく噛むことの効果⑤食べすぎを防ぐ

時間をかけてしっかり噛んで食べると、脳の満腹中枢が刺激され、 適量で満腹感を感じるので食べすぎを防げます。

よく噛むことの効果⑥口の周りの筋肉を鍛える

噛むことで口の周りの小さな筋肉が鍛えられ、口の動きがよくなります。 成長期においてはあごの 発育を促す効果も。

唾液の大切な働き

口の周囲には唾液を分泌する唾液腺が3つあります。 噛むことで唾液腺が刺激され、唾液の分泌が促されます。1日1~1.5ℓ分泌される唾液パワーに注目しましょう。

消化を促進する

唾液に含まれるアミラーゼという消化酵素が、 食べ物の中のでんぷん麦芽糖に分解し、胃で消化されやすくします。

食べ物をまとめる

パサパサしたものでも唾液と混ざり合うことで、飲み込みやすい柔らかさの塊 (食塊) となってまと まります。

口内を掃除する 

唾液は歯、粘膜、 舌の表面などについた食べカスや 多数の細菌などを洗い流して、ロの中を清潔に保ちます。

細菌の増殖を抑える

唾液に含まれるリゾチームやラクトフェリン IgA抗体などの物質が、 口内に入った細菌の増殖を抑えます。

粘膜を保護する

唾液中に含まれるネバネバ成分の糖タンパクが粘膜を覆い、食べ物や義歯などの刺激から粘膜 を守ります。

むし歯を防ぐ

食後は口内が酸性に傾き歯の表面を溶かしますが、 弱アルカリ性の唾液が口腔内を中和。 歯の表面を保護する働きも。

発音しやすくする

唾液で口の中が適度に潤っていると、舌やほお、唇などの動きがスムーズになり、言葉をはっきり発音できます。

よく噛むためのコツ 

食事を楽しみながら噛む回数を増やすコツとは。 

※飲み込む力が弱い人は、無理せず食べやすい方法で食べましょう。

調理のとき

①噛みごたえのある食材を選ぶ

豆腐のような柔らかいものは、 噛まなくてもスッと飲み込むことができます。 噛む回数を増やすには根菜類などの硬い食材、 コンニャクなどの弾力のある食材を取り入れましょう。

②複数の食材を組み合わせる

里芋だけの煮物よりも筑前煮、 白飯よりも混ぜご飯というように、複数の食材を組み合わせると食 感や味に変化が出るため、噛む回数が自然にアップ。 食材豊富な食事がおすすめ。

③食材を大きめに切る

同じキュウリでも千切りにしたものよりも乱切りにしてサイズを大きくしたもののほうが噛む回数が 増えます。 肉なら厚切りにするなど、食材を大きめに切りましょう。

④加熱時間を調節する

野菜は加熱時間が長くなるほど柔らかくなります。 生で食べられる野菜を取り入れたり、 加熱時間を短くして歯ごたえを残したりするのがおすすめです。

食べるとき

①一口の量を少なくする

同じ量の料理でも、一口の量を自由にした場合と少なくした場合とでは、噛む回数、噛んでいる時間 ともに、一口の量を少なくしたほうが多かったという研究結果が出ています。

②飲み込んでから次の食べ物を

飲み込む前に次の食べ物を口に入れると、 先に口にした食べ物を十分に咀嚼しないまま飲み込む ことに。 この食べ方だと早食いになり、噛む回数が減るだけでなく、肥満の原因にも。

③飲み物で流し込まない

食事中にお茶などの飲み物を口にすると、 口の中の食べ物は飲み物で流し込まれてしまうため、 しっかり噛まなくなります。 汁もの以外の水分は食後にとるようにしましょう。

④「ながら食べ」 をしない

テレビやスマートフォンなどを見ながら食事をすると、 食べること以外に意識が向かい、気がつか ないうちに次々と食べ物を口の中に入れてしまいがちになり、噛む回数が減ってしまいます。

⑤誤嚥に注意

高齢者の肺炎の多くは誤嚥によるものです。誤嚥とは食べ物や唾液が誤って気管や肺に流れ込んでしまうことです。 よく噛んでゆっくり食べることは誤嚥防止につながります。

歯と口のケア

むし歯や歯病予防だけでなく、全身の病気の予防のためにも歯と口のケアは欠かせません。

滑舌が悪くなったり、食べこぼしたり、わずかなものでむせたりするなど、加齢により口腔機能が低下した状態をいいます。口のケアはオーラルフレイル対策としても有効。

歯磨きのポイント

「食べたら磨く」 を原則に

食後は口の中に食べ物のカスが残っています。 そのため、食後は歯を磨いて口の中をきれいにす るのが原則。 また、細菌は就寝中に増えるので、起床後は丁寧な歯磨きで口の中をスッキリ。

歯ブラシは軽く持って順番磨き

歯ブラシは鉛筆を持つように軽く握ります。 例えば上下の歯の内側をそれぞれ右から左へ、次は上下の歯の外側、という風にいつも同じ順番で磨くと磨き残しがなくなります。

フロスや歯間ブラシを使う

歯ブラシではきれいに磨けない 歯と歯の間や歯と歯肉の境目は、 歯間ブラシやフロスを使います。 ただし、使い方を間違えると歯肉に傷がつくので歯科で使い方の指導を受けましょう。

歯垢がたまりやすい場所を丁寧に

菌の塊である歯垢(プラーク) が残っていると、むし歯や歯周病の原因になります。 歯、 歯と歯の間、 歯と歯肉の境目 、歯並びが悪いところなどは歯垢がたまりやすい場所。 丁寧な歯磨きで除去しましょう。

3~6カ月に1回はプロのケア

いくら熱心に歯磨きをしていても、歯垢は少しずつたまっていきます。 3~6ヵ月に1回は歯科でチェックを受け、必要に応じて歯垢や歯石を除去してもらいましょう。

歯ブラシは1カ月に1回は交換する

歯ブラシは細菌が付着しやすく、 しっかり洗ってもなかなか除去できません。 1ヵ月に1回を目安 に交換しましょう。 歯ブラシの毛先が開いたときも交換のタイミングです。

子どもの歯磨きのコツ

10歳くらいまでは一人で上手に磨くのは難しいもの。大人が仕上げ磨きをしてあげましょう。 子どもを寝かせたり、後ろに立って顔を上に向けさせたりすると、口内の奥まで見えて磨きやすくなります。

義歯のケアもしっかりと

義歯は細菌が繁殖しやすく、金属部分は細菌や食べカスが付着しやすい場所。 それが原因で口内炎が起こることも。 義歯は専用の洗浄剤につけおきしたり、ブラシで磨いたりして清潔にしておきましょう。

口のケア

①パタカラ体操

食べる動きに関連した発声です。 唇をはじくように「パ」、舌先を上の前歯の裏につけて「タ」、 舌の奥を上顎の奥につけて「カ」、舌を丸めて「ラ」 を各8回発声。 それを2回繰り返します。

②舌の体操

舌を鍛えると食べ物を飲み込みやすくなります。 舌を片方のほおの内側に強く押し付け、 外側から指で舌先を押さえ、それに抵抗するように舌でほおの内側をゆっくり10回押します。 反対側も同様に。

③唾液腺マッサージ

耳下腺、顎下腺、舌下腺の 「三つの唾液腺」を刺激して、唾液の分泌を促しましょう。

<耳下腺>

指数本を耳の前 (上の奥歯あたり)に当てて、 ゆっくりと円を描くようにマッサー ジ。 前回し、後ろ 回し各5回。

〈顎下腺〉

親指をあごの骨の内側の柔らかい部分に当て、 耳下からあご先まで3~4カ所ほど刺激。 各5 回ずつ。

〈舌下腺〉

両手の親指をあごの下に当て、 つき上げるよう にゆっくり10回押します。

④ガムを噛むのもよい刺激に

噛む行為を引き出し、 唾液の分泌を促してくれるのがガム。 緊張を和らげるセロトニンが増えストレス緩和にも有効。 リカルデントやキシリトール配合の歯の健康に役立つ賀ガムも多種出ています。

⑤歯周病菌が全身の健康に影響

歯周病で生じる炎症物質によりインスリンの働きが阻害され、高血糖状態が続きやすくなります。 歯周病菌の刺激で動脈硬化が進み、 心筋梗塞や脳卒中を起こす危険が高まることも。

⑥薬の副作用で唾液が出なくなることも

高血圧の薬や抗不安薬、 睡眠薬、 抗アレルギー薬 などの副作用として唾液の分泌量が減り、口の中が乾燥するドライマウスになることがあります。 気になるときは薬剤師にご相談ください。

Keep on smiling!
管理栄養士による「食」に関するinstagramもチェック!!

引用

classA Life
タイトルとURLをコピーしました