管理栄養士が勧める『発酵食のちから』

薬剤師コラム

冷たいものばかりを口にしがちな夏。そのような食生活では、 内臓は冷え切ってしまいます。内臓が冷えると代謝や免疫力が落ち、夏バテの原因に。そんな夏にイチ押しの食べ物は、体を温める発酵食です。

発酵食のいいとこ

栄養価が高い

例えば、甘酒に使われる米麹は、発酵の過程でビタミンB 群をはじめ350以上の有効成分をつくり出します。さらに、でんぷんをブドウ糖に分解。甘酒が飲む点滴といわれるゆえんです。

旨味・風味が豊か

発酵の過程で、でんぷんはブドウ糖に、たんぱく質はアミノ酸に分解されます。どちらも旨味や風味をつくり出すもと。また、発酵することで香りを感じる成分の種類も増えます。

保存性が高いものも

発酵食が生まれたのは、冷蔵設備のない時代に食材を保存するため。伝統的な味噌や醤油の塩分含有量は約12%ですが、これ以下では腐效菌が繁殖することを昔の人は知っていたのです。

消化吸収しやすい

でんぷんはブドウ糖に、たんぱく質はアミノ酸などに分解されてから腸で吸収されます。しかし、発酵食は最初から分解されているので早く消化吸収されます。

腸内環境を整える

乳酸菌を含む発酵食は、 腸で善玉菌を増やす働きがあるといわれます。でんぷんを善玉菌のエサとなるオリゴ糖に分解する酵素をもつ発酵食や、食物繊維を含むものもあります。

発酵食品別、上手な取り入れ方のポイント

細菌やカビ、酵母といった微生物によって、素材にはない旨味と有効成分が付加された発酵食品。種類は多種多様で、しかも個性豊か。その個性を活かして上手に食事に取り入れましょう。

牛乳を乳酸菌で発酵【ヨーグルト】

牛乳に含まれるたんぱく質や脂肪は乳酸菌によって分解され、消化吸収がさらにアップ。乳酸菌そのものも腸内の善玉菌のエサとなり、善玉菌を増やして腸内環境をきれいにします。

1.肉や魚を漬けて柔らかく

乳酸菌が肉や魚のたんぱく質の筋繊維を分解するので、身が柔らかくなります。ヨーグルトに含まれるたんぱく質には、肉や魚の臭みを取り除く働きもあります。肉や魚をヨーグルトに漬けてから調理 すると味もマイルドに。

2.バナナやきなこと一緒に

食物繊維が豊富なバナナや、 大豆から作られるきなこと一緒にとれば、ヨーグルトにはない食物繊維をカバーできます。また、きなこは大豆オリゴ糖を多く含むので、ビフィズス菌を増やし、お腹の調子を整えます。

3.味噌とヨーグルトの漬物

ぬか床の代わりに、味噌とヨーグルトという強力な発酵食コンビに、好きな野菜を漬けてみては?長時間漬けると塩辛くなるので、半日ぐらいで十分です。味の種類を変えて風味の違いを比べてみ るのもおすすめです。

大豆を納豆菌で発酵【納豆】

蒸し煮した大豆に納豆菌をつけて 40℃前後の環境に数日置くと、納豆菌が大豆のたんぱく質を分解してネバネバした納豆に変身させます。大豆の栄養を丸ごと受け継いでいます。

1.カルシウムが多い食品と一緒に

大豆にもビタミンKが含まれていますが、納豆菌により発酵した納豆は、その含有量がグンとアップ。ビタミンKは骨の材料であるカルシウムの吸収を高めます、海苔やじゃこなどカルシウムの多い食品と一緒にとりましょう。

2.ナットウキナーゼは熱に弱い

ナットウキナーゼは納豆のネバネバに含まれるたんぱく質の分解酵素で、血栓の主成分を分解させる働きがあることがわかっています。ただし熱に弱いので、加熱せずに食べたほうがパワーを損なわずにすみます。

3.納豆キムチで乳酸菌も

芽胞という殻をもつ納豆菌は胃酸で溶けずに腸で善玉菌と似た働きをします。乳酸菌を含むキムチととれば腸が元気に。キムチの乳酸菌はリラックス効果があるとされるGABA というアミノ酸をつくるので夜食べるほうがおすすめ。

4.ワーファリンを飲んでいる人は食べてはダメ

心筋梗塞などの治療や予防に使われるワーファリンは血を固まりにくくし、血栓ができるのを抑える薬です。一方、納豆は血が固まるときに必要なビタミンを多く含むため、ワーファリンの効果を弱め てしまいます。

調味料やドリンクに使用【塩麹・甘麹】

塩麹は米麹に塩と水を加えて発酵させたもので、肉や魚を漬けたり、和えたりして使います。甘麹は米に湯やもち米などを混ぜ、一定の温度で発酵させたもので、甘酒のもとに。

1.そのまま摂取して疲労回復

塩麹はマヨネーズと混ぜて野菜のディップやサラダのドレッシングに、甘麹は薄めて甘酒ドリンクに。消化吸収のよいブドウ糖や、糖質や脂質などがエネルギーに変わるのを助けるビタミンB群が含まれるので疲労回復に最適。

2.豚肉と調理してビタミンB群強化

暑いからとそうめんやそば、ジュースなどの糖質を多く含む飲食物ばかりとっているとビタミンB群が不足します。 豚肉も塩麹もビタミンB群が豊富です。ビタミンB群は、いろいろな食品から摂ることが大切です。

3.塩・砂糖の代わりに

小さじ1杯の塩を塩麹で代用する場合の日安は小さじ2 杯。塩麹の塩分は15%前後なので減塩におすすめです。ただし、おにぎりやポテトサラダなどは固まりにくくなるので不向き。甘麹は砂糖よりも代謝を上げるので体を温めます。

4.塩・砂糖の代わりに

夏のお米は水分が減っているので塩麹を入れて炊くのがおすすめ。ふっくらして、旨味が増したご飯に炊き上がります。しかも傷みにくいので夏にピッタリ。米2合に対し塩麹大さじ1が目安です。

いろいろな発酵食品を取り入れよう

おいしさと健康をもたらしてくれる発酵食パワーをいただきましょう。

味噌

白味噌系はストレスを和らげるとされるGABAが豊富。赤味噌系はアミノ酸が多く疲労復に。豆味噌は加熱すると旨味が出てきますが、米味噌、麦味噌は風味が飛ぶので加熱しすぎはダメ。

穀類や果実などを酢酸菌で発酵させたものが酢。酸味が食欲を増進し、酢に含まれるクエン酸は疲労回復に役立つとされています。酢の主成分である酢酸には血管を広げる働きが。

ぬか漬け

乳酸菌と酵母が働くぬか床に野菜を漬け込むことで、ぬかがもっている栄養や旨味が野菜に浸み込みます。野菜の栄養が丸ごと摂れるぬか漬けですが、塩分量も多いので食べ過ぎには注意。

キムチ

白菜などの野菜に食塩、トウガラシ、ニンニク、魚介の塩辛などを混ぜ、乳酸発酵させたもの。非発酵のキムチも市販されているので、パッケージの「乳酸発酵」 などの表示を確認しましょう。

ピクルス

香辛料などで調味した酢にキュウリやニンジン、パプリカなどを漬けた、 いわゆる西洋漬物がピクルスです。酢の成分と野菜の成分を一緒に摂れるのが魅力。常備菜として重宝します。

カツオ節

カツオ節の製造過程において麹菌がプロテアーゼという酵素をつくり出します。この酵素がカツオのたんぱく質を分解し、イノシン酸などの独特の旨味成分を生成します。

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引用

“引用文献:classA Life”
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